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仕事

WORKS

建築の仕事に携わり、かれこれ50年以上が経ちました。
これまでに手がけた中で心に残る仕事、思い出深い仕事について振り返ってみたいと思います。

宇都宮城
茶室
嘉右衛門町伝建地区
思い出の仕事 1錣(しころ)の家
栃木県栃木市 1979年

錣(しころ)の家 /
ゲストハウス・タキザワ
(設計:大江アソシエイツ)

錣(しころ)の家 / ゲストハウス・タキザワ

大きな転機となった数寄屋建築

故・瀧澤武社長のゲストハウスの仕事は、私の仕事人生の大きな転機になりました。父・新一が瀧澤家に出入りしていたことから、息子の私に白羽の矢を立ててくれました。

経験足らずで職人も抱えていない当時の自分は、朝早くから夜遅くまでものづくり仕事をするほかありません。図面を解読できないときは、夜中に東京の設計事務所まで、教えを請うために2日おきに通い、建築学を身に付けました。

仕事を進めるにあたり、当時の私の経験では間違いに気が付かないこともありました。施主に謝り、許してくれたことが2度ほどありました。

完成した折に施主から、困難なことを成し遂げた私に対して、「大学に上げてやったようなものだ」とお褒めの言葉をいただきました。

外観
外観
玄関
玄関
思い出の仕事 2宇都宮城
栃木県宇都宮市 2007年

宇都宮城
(設計:八木清勝)

宇都宮城

未知なる仕事への挑戦

宇都宮城は栃木県の県庁所在地・宇都宮市にあります。2007年に宇都宮城本丸の一部が木造で復元され、宇都宮城址公園として一般公開されました。

栃木市生まれの私が宇都宮城の復元工事に携わる機会を得たのは、大工棟梁として名高い田中文男氏の口利きでした。棟梁の推薦は大変に重く、一度は辞退申し上げましたが、はねのけられました。

棟梁は若い時分から常に難しい仕事に挑戦する人で、その体から沸々とエネルギーが湧き上がっていました。私自身も節目節目で、初めて経験する難易度の高い仕事を経験してきましたが、時に神頼みをして自らの精神を高め、果敢に立ち向かっていきました。

この宇都宮城の復元工事はまさに、未知なる仕事への挑戦でした。まず、築城に関する専門用語が理解できないため、都内の書店まで足を運んで専門書を漁りました。その後、作事の方向性を決め、各現場に対応できる職人さんを抜擢しました。職人さんそれぞれに得手があるので、私がそれを判別して工程ごとに配置し、作業がスムーズに流れるように工夫しました。

■ 宇都宮城清明台

仮組
工作所で仮組をする
組立て
組立て・難しい隅の部分
棟上げ
棟上げ
下地完了
下地完了

■ 宇都宮城完成 内部

宇都宮城完成 内部

■ 宇都宮城完成 鉄砲狭間

宇都宮城完成 鉄砲狭間
思い出の仕事 3数寄屋建築「岩下邸」
栃木県栃木市 1984年

数寄屋建築「岩下邸」
(設計:大江アソシエイツ)

数寄屋建築「岩下邸」

木造建築ならではの空間美を表現

実力以上の仕事へのチャレンジは、大工としての自分を育ててくれます。岩下邸の仕事も同様で、建坪約80坪の数寄屋建築は、住まいのほかにゲストハウスとしても機能する邸宅です。

京都の北山杉をはじめヒノキ材をふんだんに用いた平屋建ての住まいは、建物と庭の調和をコンセプトに、日本古来の木造建築の空間美が見事に表現されています。

この仕事に携わる中で私は、幾度となく京都に足を運び、伝統建築を間近に見て、その佇まいを肌で感じ、大いに仕事に活かしました。大工としての技量を高めてくれた施工例として印象に残っています。

数寄屋建築「岩下邸」
数寄屋建築「岩下邸」
数寄屋建築「岩下邸」
数寄屋建築「岩下邸」
思い出の仕事 4真壁地区・潮田家の
震災復旧
茨城県桜川市 2011年

真壁地区・潮田家の
震災復旧

真壁地区・潮田家

建築を学ぶ学生たちとの協働作業

2011年の東日本大震災で、お隣の茨城県も甚大な被害に見舞われました。桜川市真壁地区は、2010年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されましたが、震災によって歴史的建造物の多くが被災。震災復旧に携わった潮田家も例外ではなく、強い揺れで見世蔵・袖蔵・脇蔵などの瓦や土壁が崩れ落ちてしまいました。

主屋の被害状況
主屋の被害状況
脇蔵の被害状況
脇蔵の被害状況

小山高専の先生から連絡が入り、大変な状況を目の当たりにして、全身全霊で修復作業に取り組まなければならない仕事だと感じました。設計から見積もり、施工管理まで私一人で行いました。

古民家再生
震災復旧プロジェクト
震災復旧プロジェクト
震災復旧プロジェクト

これまで蔵の修復や古民家再生の経験は豊富にありましたが、震災復旧の仕事は初めてでした。単に壊れた部分を直すのではなく、強い揺れにも耐え得る新たな構造体とするために、小山高専の先生や生徒たちと協働で震災復旧プロジェクトに取り組みました。

この仕事をきっかけに、文化財を修復するための専門知識や技術の必要性を強く感じ、後に「日本伝統建築棟梁」の認定を目指すことになります。

思い出の仕事 5嘉右衛門町伝建地区
ガイダンスセンター
栃木県栃木市 2021年

嘉右衛門町伝建地区
ガイダンスセンター

嘉右衛門町伝建地区ガイダンスセンター

地元職人さんの高度な技術力を結集

栃木市中心部の嘉右衛門町は江戸時代のまちなみが今なお残り、県内で唯一、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、地元生まれの私にとっても身近なエリアです。

市はかねてよりエリア内の味噌工場跡地を、観光・まちづくり・防災の拠点施設として整備を推し進め、2021年7月に「嘉右衛門町伝建地区ガイダンスセンター」としてオープンしました。

元請業者として事業受託し、当社にとって初めての大きな公共工事になりました。江戸時代に建てられた見世蔵を含む計4棟の木造平屋建ての修理・復元は、現代の建築基準法に合わせるために曳家(ひきや)工事まで行う大がかりなものでした。

大工さん、左官屋さん、瓦屋さんなど職人の多くが地元の人で、それぞれが持ち前の技術を遺憾なく発揮し、心を込めて作業にあたりました。仕事に携わる職人さんが恥ずかしくない仕事をするための「やる気の向上」が私の役目でした。

嘉右衛門町伝建地区ガイダンスセンター
嘉右衛門町伝建地区ガイダンスセンター

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